お子様が学校を休む日が増えると、保護者様は「学校へ行くように促したほうがよいのか」「今は休ませたほうがよいのか」と迷うことがあります。
不登校の状態は、いつも同じではありません。お子様の状況によって、必要な関わり方は異なってきます。
キミノ高等学院では、不登校の大まかな経過を「前駆期・進行期・混乱期・回復期」の4つに分けて捉えています。この記事では、各段階で見られる状態と、保護者様や学校が大切にしたい関わり方について解説します。
※この4段階は、お子様を医学的に診断したり、現在の状態を一つに決めつけたりするためのものではありません。変化の過程や必要な支援には個人差があるため、関わり方を考える一つの目安としてご覧ください。
不登校の「4つの段階」とは
キミノ高等学院では、不登校の経過を「前駆期・進行期・混乱期・回復期」の4つに分けて考えています。
この4段階を知る目的は、お子様を分類することではありません。お子様が現在どのような不安を抱えているのかを理解し、その時点で必要な支援や声のかけ方を考えることが目的です。
たとえば、学校を休み始めたばかりのお子様と、長く休んだ後に自分から何かを始めようとしているお子様とでは、周囲に求められる関わり方が同じとは限りません。保護者様や学校が先を急がず、お子様の現在の状態に合わせて次の一歩を考えることが大切です。
この記事でいう「不登校改善」について
キミノ高等学院では、不登校改善を「前の学校に在籍していた頃よりも、キミノ高等学院へ来てから登校回数が増えた状態」と考えています。
そのため、「毎日登校できるようになったこと」だけを改善と呼んでいるわけではありません。以前はほとんど登校できなかった生徒が週1日通えるようになった場合や、週1日だった登校が週2日、週3日へ増えた場合も、その生徒にとっての大切な変化として捉えます。
また、ここでいう「改善」は、お子様の価値を評価する言葉でも、何らかの症状が「治る」ことを示す言葉でもありません。お子様が安心できる人や場所を増やし、自分で動ける日が少しずつ生まれている状態を捉えるための考え方です。
文部科学省が示す不登校支援の基本的な考え方
文部科学省は、不登校の支援について、「学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的な自立を目指すことが必要だと示しています。また、本人と保護者の意思を尊重し、一人ひとりの状況に応じて支援することも求めています。
これは、不登校支援全体について国が示している基本的な考え方です。キミノ高等学院が用いている「前駆期・進行期・混乱期・回復期」という4段階は、文部科学省が定めた分類ではなく、学院が生徒への支援を考える際に用いている枠組みです。両者は区別してご覧ください。
参考:文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」
不登校の4つの段階を一覧で確認
| 段階 | 主に見られる状態 | 大切にしたい関わり方 |
|---|---|---|
| 前駆期 |
学校を休む日が増える。行きしぶり、食欲不振、頭痛や腹痛などが見られることがある |
本人が何に困っているのかを理解し、「一緒に考える人」であることを示す |
| 進行期 | 登校できる日が急に減る。週0〜1日ほどになることもある | 無理に登校させず、本人にかける言葉や周囲の態度を見直す |
| 混乱期 | 本人も保護者様も、どうすればよいか分からなくなる | 家庭だけで抱え込まず、学校や第三者と一緒に状況を整理する |
| 回復期 | 前へ向かうエネルギーが生まれ、自分から何かを始めようとする | 大きな目標を急に求めず、取り組める目標と達成経験を重ねる |
表に挙げた状態は、あくまで一つの目安です。特定の言葉や行動が見られたからといって、記事だけでお子様の段階を断定することはできません。
1.前駆期|学校を休む日が増え始める
前駆期に見られる状態
前駆期は、学校を休む日や、朝に学校へ行きしぶる日が増え始める時期です。キミノ高等学院では、この時期に見られることがあるサインとして、次のような状態を紹介しています。
- 学校を休む日が少しずつ増える
- 朝になると学校へ行くことを嫌がる
- 食欲が落ちる
- 頭痛や腹痛を訴える
まだ登校できている日があるため、周囲からは変化が分かりにくい場合もあります。しかし、本人の中では、学校生活や人間関係、学習などに対する困りごとが大きくなっている可能性があります。
本人の困りごとを理解する
前駆期では、登校を求める前に、本人が何に困っているのかを理解することが大切です。
保護者様がすぐに答えを出そうとするのではなく、お子様の話を聞き、「困っていることを一緒に考える人」であることを伝えます。
お子様がすぐに気持ちを言葉にできるとは限りません。その場合も、話すことを無理に求めず、保護者様がお子様の変化に気づいていることや、困ったときに一緒に考える意思があることを伝えます。
キミノ高等学院では、状態が大きく変化する前から本人の困りごとを把握し、早い段階で関わり始めることを重視しています。
2.進行期|登校できる日が急に減る
進行期に見られる状態
進行期は、学校へ行ける日が急に減る時期です。
週に数日通っていたお子様が、週0〜1日ほどしか登校できなくなる状態などが一例として挙げられます。変化が急に表れるお子様もいれば、登校できる日が少しずつ減っていくお子様もいます。
この時期は、保護者様も「昨日までは行けていたのに、なぜ急に行けなくなったのだろう」と戸惑うことがあります。
無理に登校を促さない
進行期では、本人の状態を確認しないまま、無理に登校させようとしないことが大切です。
「学校へ行きなさい」と繰り返し求めたり、本人の状態を確認しないまま登校させようとしたりすることは避けましょう。
保護者様が心配して声をかけても、現在のお子様にとっては、その言葉が大きな負担になる場合があります。そのため、言葉の内容だけでなく、保護者様がどのような態度で接しているかも含めて見直します。
「何を言えば学校へ行くのか」と考える前に、「本人は今、何を負担に感じているのか」「安心して過ごせる状態になっているか」を確認することが必要です。
3.混乱期|本人も保護者様も対応が分からなくなる
混乱期に見られる状態
混乱期は、お子様本人も保護者様も、これからどうすればよいか分からなくなっている時期です。
お子様が自分の気持ちを整理できず、保護者様も、声をかけるべきか見守るべきか判断できないことがあります。家庭の中だけで対応を続けるうちに、本人と保護者様の双方が疲れてしまう場合もあります。
家庭だけで抱え込まず、第三者と状況を整理する
キミノ高等学院では、混乱期には第三者の関わりが役立つ場合があると考えています。
学校や支援者などの第三者が関わることで、お子様と保護者様の間だけでは整理しにくかった状況を、別の視点から確認できます。また、お子様が保護者様には話しにくいことを、家庭外の相手には話せる場合もあります。
第三者へ相談することは、保護者様がお子様への関わりを諦めることではありません。家庭だけで抱えていた悩みを共有し、お子様に必要な支援を一緒に考えるための選択肢です。
この時期は、すぐに大きな変化を求めず、周囲が本人との関係を保ちながら支援を続けることが大切です。
4.回復期|自分から動くためのエネルギーが生まれ始める
回復期に見られる状態
回復期は、お子様の中に、前へ向かうためのエネルギーが生まれ始める時期です。
例えば、お子様が「暇だな」と口にするなど、身の回りや外の世界へ関心が向き始めることがあります。
それまで何かを始める余裕がなかったお子様が、身の回りのことや外の世界へ少しずつ関心を向け始める場合があります。
ただし、「暇だな」という言葉だけで回復期だと判断することはできません。生活の様子や本人の気持ちを確認しながら、現在取り組めることを考えます。
小さな目標と達成経験を重ねる
回復期に入ったように見えると、周囲は「今なら学校へ戻れるかもしれない」と考え、大きな目標を設定したくなることがあります。
しかし、キミノ高等学院では、いきなり毎日の登校や長時間の学習を求めるのではなく、本人が現在取り組める目標から始めることを大切にしています。
たとえば、生活習慣を整えるための小さな目標を設定し、本人が達成できた経験を重ねます。目標を達成した経験は、「自分にもできた」という感覚につながります。
目標を達成できなかった場合も、本人の努力不足と決めつけません。目標の内容や大きさが現在の状態に合っていたかを確認し、必要に応じて設定し直します。
どの段階でも土台になる「基本的な安心感」
キミノ高等学院では、4つの段階のどこにいる場合でも、「基本的な安心感」を支援の土台として位置づけています。
基本的な安心感とは、お子様が「自分はここにいても大丈夫」「今の自分を受け入れてもらえている」と感じられることです。
本人の気持ちや現在の状態を否定する言葉が続くと、お子様は自分の気持ちを話しにくくなります。そのため、前向きな行動を求める前に、本人が安心して関われる関係をつくります。
日々の関わりで大切にしたいこと
- 気持ちを安心して話せる関係をつくる
- 本人と一緒に、今取り組める小さな目標を考える
- 結果だけでなく、取り組んだ過程を一緒に振り返る
「そのままでいていい」と受け入れることから始める
お子様を受け入れることは、困りごとを放置することではありません。
まずは、お子様が現在感じているつらさや不安を否定せず、「困っていることを話しても大丈夫」と感じられる状態をつくります。そのうえで、本人と一緒に、次に取り組めることを考えます。
対面で話すことが難しい生徒には、顔や声を出さずにチャットで関わるなど、接点の持ち方を調整する場合もあります。支援方法は一律ではなく、本人の状態や希望を確認したうえで個別に検討します。
安心感を土台に、自己肯定感を育てる
基本的な安心感は、自己肯定感を育てる前提・土台です。
お子様が小さな目標に取り組み、達成できた経験を重ねると、「自分にもできることがある」と感じられる場合があります。周囲は結果だけを評価するのではなく、本人が取り組んだ過程や、以前から変化した点を確認します。
お子様の状態に合わない目標を求めるのではなく、本人が取り組める大きさまで目標を調整することが重要です。
キミノ高等学院は、現在の段階に合わせて支援を考える
キミノ高等学院では、不登校に関する論文・資料・書籍などをもとに、生徒への関わり方を「不登校の教科書」としてまとめています。教職員はこの内容を研修で学び、各校舎で共通の考え方をもって生徒と関わります。
ただし、すべての生徒へ同じ支援を行うわけではありません。先生は、次の点を一人ひとり確認します。
- 現在、どのような状態で過ごしているか
- 学校や人との関わりに、どのような不安があるか
- 本人が今できることと、難しいことは何か
- どのような声のかけ方や接点であれば負担が少ないか
- 次に取り組む目標を、どの大きさに設定するか
登校を促すことから始めるのではなく、オンラインで先生と話す、個室で過ごす、好きなことを通じて人と関わるなど、本人が現在取り組める方法から支援を始める場合もあります。
不登校の4段階についてよくある質問
Q.4つの段階は、必ず同じ順序で進みますか?
「前駆期・進行期・混乱期・回復期」は不登校の大まかな経過として説明できます。一方で、すべてのお子様が同じ順序や同じ速度で進むと決めつけることはできません。この記事だけで現在の段階を断定せず、実際の生活の様子や本人の気持ちを確認しながら支援を考える必要があります。
Q.一つの段階は、どれくらい続きますか?
各段階について一律の期間は示せません。学校へ行きづらくなった背景や生活の状況、周囲との関係は、一人ひとり異なります。「この段階は何週間で終わる」と期間を決めて考えるのではなく、現在見られる変化を継続して確認します。
Q.お子様がどの段階にいるのか分からない場合は、どうすればよいですか?
一つの言葉や行動だけで段階を判断する必要はありません。登校状況、生活の様子、本人が不安に感じていること、家庭での会話などを整理すると、現在必要な関わり方を考えやすくなります。家庭だけで整理することが難しい場合は、学校や第三者へ相談することも選択肢の一つです。
Q.学校へ行くように促してはいけませんか?
どの段階でも、同じ対応が適切とは限りません。特に進行期では、本人の状態を確認しないまま無理に登校させたり、「学校へ行きなさい」と繰り返し求めたりすることを避けます。まずは、本人が何を負担に感じているのかを確認することが必要です。
一方で、本人から「やってみたい」「少しなら行けそう」という言葉が出た場合は、その希望をもとに、無理のない目標を一緒に考えます。
Q.頭痛や腹痛が続く場合は、どうすればよいですか?
頭痛や腹痛を、学校への不安だけが原因だと決めつけないことが大切です。症状が続く場合や、症状が強い場合は、学校の相談窓口だけでなく、必要に応じて医療機関にも相談してください。お子様の心身の状態を確認し、家庭・学校・関係機関で必要な支援を考えます。
Q.保護者だけで対応できなくてもよいのでしょうか?
保護者様だけですべてを解決しなければならないわけではありません。特に、本人も保護者様も対応が分からなくなっている混乱期では、第三者が関わることで状況を整理しやすくなる場合があります。学校や支援者と情報を共有し、本人に必要な関わり方を一緒に考えます。
お子様の現在地を、一緒に整理します
「声をかけるべきか、見守るべきか分からない」という段階でもご相談いただけます。現在の登校状況や生活の様子を伺い、今できることから一緒に考えます。
保護者様のみでもご参加いただけます。