思春期の時期における子育てコーチング

思春期のお子様に対して、こんな悩みを抱えている保護者の方は多いのではないでしょうか?
なかなか言うことを聞いてくれない、会話が極端に減ってしまった、叱っても効果がない、などなど。
一方で、思春期の時期は学校での学習が少しずつ難しくなったり、受験を具体的に意識し始めなければならなかったり、将来の方向性について考え始めなければならなかったり、とお子様にとって大変重要な時期でもあります。

今回の記事は、思春期のお子様、あるいはこれから思春期に差し掛かるお子様を持つ保護者の方に向けて、思春期向け子育てコーチングについて紹介します。子育てコーチングを学ぶと、難しいといわれる時期のお子様が意欲的、積極的に夢や目標に向かって取り組める後押しをできるようになります。

 

 

1、思春期とはどのような時期か?

お子様との向き合い方を考える前に、まずは思春期がどのような時期であるかについて簡単に説明いたします。一般論ですので、お子様によって当てはまらない部分もあるかと思います。しかし、基本的な考え方や状況について把握しておくことで、子育てコーチングを実践する際にも接し方の目安になるかと思います。

 

1-1 思春期は何歳から何歳まで?

思春期が何歳から何歳までを指すかについて、明確な決まりはありません。
一般的に、小学校高学年くらいから高校2年生くらいまでの期間が思春期であるとされていますが、いつから思春期が始まるかは個人差もあります。また、男女で比較すると、女子の方が少し早めに思春期の特徴が表れることが多いとされています。
ですので、時期はあくまで目安として、保護者の方はお子様の精神的・身体的な変化や他人との接し方・かかわり方を見ながら、お子様の状態を把握する必要があります。

 

1-2 思春期の精神面での特徴

思春期の精神面での大きな特徴として4つの側面を紹介します。

    1. 親に対して反抗的になる
    2. 思春期の子どもは、親と口をきかなくなる、返事がそっけなくなり必要最小限の会話しかしない、家族に対して乱暴な言葉遣いをする、といった態度を取りがちになります。

 

    1. 感情が不安定になる
    2. 子どもと大人の過渡期にあたる思春期では、気持ちが不安定になりやすく、その結果イライラしやすくなったり、やる気が起きなかったりしてしまいがちです。不安が強くなる時期でもあります。また、思春期の頃になると保護者に対して本音を隠すようにもなりますので、余計にフォローが困難なものになりやすいです。

 

    1. コンプレックスが強くなる
    2. 異性を強く意識するようになる思春期では、自らの外見や能力について強く意識するようになります。友だちやクラスメイトと比較して、苦手なものやお子様自身の外見の特徴に関して強いコンプレックスを感じるようになります。

 

    1. 周囲に影響されやすくなる
    2. 友だちや先輩、クラスメイトなどから影響を受けやすいのも思春期の特徴です。

 

    1. 思春期の時期は価値観がまだ定まっていない子どもが多く、他人と同じ行動をとる連帯感により安心を得ようとします。

 

    1. 具体的な行動としては、友だちにつられて万引きをしてしまったり、友だちがクラスメイトをいじめているときに同調してしまったり、といったものです。逆に、部活での活躍やクラス内でのリーダーシップなど、良い面で憧れを抱いてお子様にとってプラスの影響がみられる場合もあります。

 

    これらの行動特性はは、全て子どもから大人への過渡期であるが故の不安定さから生じています。お子様自身の中での理想と現実のギャップから生じる葛藤やもどかしさから芽生える感情であるといえます。

 

1-3 思春期には自らを客観視できるようになる!

思春期の不安定な内面を紹介しましたが、これらは自らを客観視できていることの裏返しでもあります。自分自身を客観視できるようになるからこそ、他人に認められたいという欲求やコンプレックスが生じます。そしてこの客観視が子育てコーチングにおいては、非常に重要なポイントとなります。

自分自身の実力や性格を客観的に把握することを「メタ認知」といいます。メタ認知のスキルを備えた子どもは、目標到達のために何が必要で、どういった力を身に着けていかなければならないか考えられます。したがって、子育てコーチングを用いて行き詰っているポイントを聞いたり、目標を再確認したりすることで、学力やスキルが飛躍的に伸びます。特に周囲から指示されなくても目標に向かって主体的に努力をし続けられる傾向がみられます。

同時に、思春期には親からの自立心が強くなったり、芸術や文学など自らの興味にとことん熱中する傾向がみられたりします。
思春期は非常に難しい時期ではありますが、精神面の不安定な部分をケアしながら、この時期だからこそ身につく能力をうまく導いてあげれば、さまざまな分野で大きな成長がみられるでしょう。

 

2、子育てコーチングに基づいた思春期のお子様との日常生活での接し方

思春期に限ったことではありませんが、子どもは親からの過干渉を嫌う傾向にあります。過度な口出しをせず、信じて見守る姿勢が重要です。
しかしながら、同時にコミュニケーションも非常に重要です。特に思春期の時期は、お子様の心がオープンになりにくい部分がありますので、いかにコミュニケーションを取るかが重要です。子育てコーチングに基づいた思春期の子どもに対する日常生活での接し方について解説します。

 

2-1 無理に雑談を増やす必要はない

もし、お子様が思春期になり、保護者の方々との日常の会話が減ってしまった場合、意識的に雑談を増やす必要はありません。この時期のお子様は、自立心を高めるために自らの内面で葛藤しながら、親からの自立を試みているところですので、保護者の方には信じてそっと見守る姿勢が求められます。これは、子育てコーチングの3大スキル、承認の姿勢です。

しかし、会話の量が減っているときこそ、お子様に対して目と心を向けることが重要です。上述の通り、思春期は非常に不安定な時期です。お子様自身もクラスメイト達も葛藤を抱えて生活していますので、お子様がトラブルを抱えてしまいやすく、間違った行動を真似してしまいやすいでしょう。

そうしたときには、学校への連絡・相談やお子様との対話が必要になります。そして、お子様と対話の質を良いものにするためには、日ごろの信頼関係が非常に重要です。
保護者の方が、自分から会話を増やそうとすると、お子様は拒絶の姿勢を取ってしまい逆に信頼関係が損なわれる可能性が高まるでしょう。信頼関係を構築するための基本的な姿勢は、必要な時にいつでも話を聞くという態度を示しておくことです。「困ったことがあったら、いつでも相談しなさい」「いつでも話を聞くよ」といったメッセージがお子様の安心感につながるでしょう。雑談が減るのは当たり前のこととして、いざという時に信頼感を持って対話できる状態を目指して接するようにしましょう。

 

2-2 保護者の方自身が努力する姿勢を見せる

思春期の子どもは、自分自身を客観視できるようになると同時に、他者に対しても客観的に評価をするようになります。小学生低学年のころまでは無条件に好きという感情で見ていた保護者の方に対しても、客観的にどのような性格をしていて、どんな判断基準を持っていて、どういう姿勢で日々暮らしているのかを把握できるようになります。お子様が口ごたえをするときに、痛い部分を突かれるようになってきたと感じられている保護者の方がいらっしゃるかと思いますが、それも客観視する能力が備わってきたからです。そもそも、親に反抗的な態度を取ることこそが、親を客観視している証拠でもあります。

「親の背中を見て子は育つ」と言いますが、思春期のお子様はかなり正確に自身の保護者のことを観察しています。そして、保護者の方がどのように過ごしているかが、お子様の生き方に決定的な影響を与えます。自らが努力する姿勢を示してこそ、コーチングの際の説得力も大きく変わります。

 

2-3 いつでも話ができる状態を作っておく

お子様がほとんど何も話をしてくれないというご家庭では、意識して雑談しなければ一日ほとんど何も話さずに終わってしまうかもしれません。見守る姿勢を意識すると頭ではわかっていても、出口が見えず非常に不安を感じられることかと思います。

このようなご家庭におすすめしたいのが、一つひとつの挨拶を徹底することです。

「おはよう」
「おかえりなさい」
「おやすみなさい」

これらの挨拶は、生活態度のしつけという点でも非常に重要なことです。挨拶をしたからと言って、すぐに返事が返ってくるのを期待できるわけではありませんが、日常的にしっかりと目を見て挨拶をすることで、お子様が話したくなった時に話しやすい状態になっていることが重要です。

干渉しすぎると逆効果なので、姿勢としてはあくまで返答を求めずに、話しやすい雰囲気作りを徹底するという気持ちで試みると良いかと思います。

 

3、進路や学習態度は自己肯定感が重要なカギに(マズローの5段階欲求)

思春期の年代になると、お子様は自律する心理が高まっています。それまでは、保護者=コーチ:お子様=クライアントの関係だったのが、お子様自身の内面にも「こうあるべき」「こうありたい」というコーチが存在するようになります。思春期のお子様が自発的に目標を持って努力するには、保護者の方が手取り足取りアドバイスするよりも、お子様の内面に良いコーチを育むことが重要になります。そのための大きなカギとなるのが、自己肯定感をいかに高めるかということです。

自己肯定感については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
子どもの自己肯定感を高める子育てコーチングとは

 

3-1 マズローの5段階欲求とは

思春期のお子様には、自己肯定感が重要なカギになるのを理解するためには、マズローの5段階欲求を用いるとわかりやすいかと思います。

マズローとは、アメリカの心理学者で、欲求の5段階説(欲求のピラミッド)を説いたことで知られています。

5段階欲求とは以下の通りです。

    1. 第1段階(生理的欲求)・・・・生きていくための基本的な欲求(食べたい・飲みたい・眠りたいなど)
    2. 第2段階(安全欲求)・・・危機を回避したいという欲求(安全なところに暮らしたい・雨風をしのげる家に住みたいなど)
    3. 第3段階(社会的欲求)・・・集団に所属したい、仲間が欲しいという欲求
    4. 第4段階(尊厳欲求)・・・他者から認められたいという欲求
    5. 第5段階(自己実現欲求)・・・自分の能力を引き出して、創造的な活動がしたいという欲求

 

    1. 現代では一部当てはまらないこともありますが、原則として、5段階欲求は下の階から順に満たされます。第1段階の生理的欲求が満たされて初めて第2段階の安全欲求が満たされ、安全欲求までが満たされて初めて第3段階の社会的欲求が満たされます。

 

    保護者の方々にとって、お子様が目標を達成するために自ら主体的に努力する自己実現欲求の状態は大変理想的だと思います。この第5段階に導くには、第4段階までをすべてクリアする必要があるということです。

 

3-2 第4段階の尊厳欲求=承認欲求を満たすには承認の姿勢が重要

第4段階の、他者から認められたいという欲求は、コーチングでよく用いられる承認欲求とほぼ同じ意味です。
承認欲求は、他者から認められること、信頼されることで満たされます。具体的には、褒められたり、自身の判断を認めてもらえたり、仕事を任されたりすることです。つまり、子育てコーチングの承認の姿勢・見守る姿勢がまさにお子様の承認欲求を満たす接し方です。承認欲求が満たされると、自然にお子様の自己肯定感が高まります。
自己肯定感が高まりは、学力の向上や自発的な姿勢につながります。欲求の第5段階の実実現欲求を起こさせるためにも、子育てコーチングにて日ごろから承認の姿勢を示し続けることがいかに重要かがお分かりいただけるのではないでしょうか?

 

3-3 承認欲求の満たし方~お子様の趣味に興味を示す

思春期のお子様の承認欲求を満たす方法として、お子様の趣味に興味を示すことを推奨します。

思春期にもなると、お子様の興味も大人顔負けになり、非常にマニアックなものになります。
男の子ならゲームやアニメ、女の子ならファッションや流行の芸能人など、保護者の方にとってはさっぱりわけのわからないことだらけではないでしょうか?お子様が趣味にハマっている姿を見て、少しでもその熱量を勉強に向けてくれたらいいのに、と思われることもあるでしょう。

大人から見ればたかだか趣味のことですが、お子様としては思春期のお子様の趣味はお子様の存在そのものと言ってもいいほど本人にとって重要なものなので、否定は厳禁です。興味を持って質問したり、一緒に興味を持ったりすることでお子様の承認欲求が満たされます。

 

3-4 保護者の方がお子様に相談する

子育てコーチングの場合、原則としてコーチの役割は保護者の方が担いますが、相手が思春期の年代のお子様の場合には、保護者の方の悩みをお子様に相談してみるのも一つの手段です。
家事のことや日常のことなど、真剣に相談すると保護者の方が思っている以上に必死に考えてくれるものです。意外なところから、解決の糸口が見えることもあります。重要なポイントは、お子様が親から信頼されている、と感じることで承認欲求が満たされ、自信につながることです。

 

4、まとめ

今回の記事では、子育てコーチングの考え方に基づいて、思春期のお子様に対していかに接するかについて解説しました。

思春期のお子様は、子どもと大人のちょうど過渡期にあり、精神的に非常に不安定な状態にあります。家庭での口数が減ったり、イライラしがちだったり、何を考えているのか保護者の方から見てもわかりにくい部分があったり、と非常に難しい時期だとされています。
こういった難しい時期ですが、身体的にも精神的にも飛躍的に成長を遂げる時期でもあります。子育てコーチングに基づいてうまく導いてあげれば、お子様が自発的に目標に向かって努力する姿勢を見せてくれることでしょう。そのために重要なことは、マズローの5段階欲求の尊厳欲求を、子育てコーチングの承認の姿勢・見守る姿勢によって十分に満たしてあげることです。