助動詞のき、けりの違いとは?分かりやすく説明|古文勉強法
こんにちは。塾講師めるです。
今回は「過去の助動詞「き」・「けり」の違い」を説明していきます!
1)助動詞「き」・「けり」の活用形と接続は?
意味を確認する前に,助動詞「き」・「けり」の活用形と接続をおさらいしましょう。
(未然形/連用形/終止形/連体形/已然形/命令形の順になっています)
「き」 :(せ)/○/き/し/しか/○
「けり」:(けら)/○/けり/ける/けれ/○
助動詞「き」・「けり」はどちらも連用形接続なので,
直前には必ず動詞の連用形があります。見分けるときの参考にしましょう。
2)助動詞「き」・「けり」の違いは?
どちらも過去を表す助動詞の「き」・「けり」ですが,実は意味に違いがあります。
それぞれの助動詞の意味について,もう一度確認してみましょう。
「き」 :a)直接過去(~た)
「けり」:a)間接過去(~た) b)詠嘆(~だなあ)
分かりやすい特徴として,助動詞「けり」には詠嘆の意味もあります。
和歌・俳句の句末に用いられている「けり」は,高確率で詠嘆の意味で用いられています。
しかし,ここで特に注目したいのは過去の用法です。
よく見ると,「き」は直接過去,「けり」は間接過去となっていますよね。
実は,同じ過去の出来事でも,自分で直接経験したかどうかで「き」「けり」を使い分けるんです。
直接経験したことは「き」,他人から見聞きしたことは「けり」で表されます。
『平家物語』に,この助動詞「き」・「けり」の違いを上手く使い分けたエピソードがあります。
反平家の立場を取って信濃(現在の長野県)に流罪にされていた大納言は,
罪を許されて京へ戻ってくると,法皇のところへ挨拶に行きました。
この大納言は和歌や音楽の才能があることで都では有名な人だったので,
法皇は久しぶりに会った大納言に「一曲聞きたいから何か歌ってくれ」と言います。
大納言は自分が流されていた信濃についての歌を歌ったのですが,
その中にあった「信濃にあんなる木曽路川(信濃にあるという木曽路川)」というフレーズを,
「信濃にありし木曽路川(信濃にあった木曽路川)」と言いかえて歌いました。
大納言はついこの間まで信濃にいたので,もちろん木曽路川を自分の目で見ています。
彼は,自分の境遇に合わせてとっさに歌詞を替えたんですね。この機転には法皇も大満足でした。
3)まとめ
いかがでしたか?今回のポイントは以下の通りです。
・助動詞「き」・「けり」の違い=意味が微妙に異なる!
→「き」 :直接過去(自分が経験した過去の出来事)
「けり」:間接過去(他人から見聞きした過去の出来事),詠嘆(和歌でよく用いられる)
さっき紹介した平家物語の大納言のエピソードのように,
古文の中には助動詞「き」・「けり」の違いを理解していないと内容が掴めないものがあります。
「過去」でひとくくりにせずに,それぞれの意味をきちんと覚えましょう!