自由落下や鉛直投射は等加速度直線運動
等加速度直線運動とは
等加速度直線運動とは、読んで字の如く、加速度が一定の直線運動です。大切な点は、速度が時間に比例して大きくなり、変位(距離)は時間が経つにつれて比例より急激な増え方をします。
加速度を 時間を とすると、等加速度直線運動における速度 の時間変化と変位 の時間変化は以下のように表されます。
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式中に出てきた は物体の最初の速度を意味しています。
まずはこの公式をしっかり覚えましょう。
(数学の微積分が得意な人向けに、一番最後に補足として、等加速度直線運動の公式を覚えるコツを記載しておきますので、気になる人は読んでみてください。)
問題演習
公式ばかり一生懸命覚えても、それを使いこなせなければ勉強する意味がありません。いくつか等加速度直線運動に関する例題を紹介するので、自力でやってみて、分からないときは解き方をみて、……というふうに、まずは自分で挑戦してみてください。
例題1
質量 の物体を、十分に高い位置から自由落下させた場合、 秒後の速度と落下距離をそれぞれ求めなさい。ただし、重力加速度は とし、空気抵抗の影響は考えないものとする。
例題1の解き方
自由落下とは、ただ落とすだけの初速度 の運動です。
ゆえに、等加速度直線運動の速度と変位を表す式は、以下のように書きかえることができます。
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等加速度直線運動の速度と変位を表す式から を除いただけです。 から に変えてあるのは、地球上での重力加速度を一般的に「重力」を意味する gravity の頭文字をとって と表されるからです。また、 から に変えたのは、単にには横(水平)方向、には縦(鉛直)方向のイメージがあるからです。
上記の式に必要な数値をあてはめて計算するだけで答えは求まります。
ひとつ注目しておいてほしいのですが、問題文に出てきたという数字がどこにも使われていません。つまり、自由落下の際の速度や落下距離は、理論上、物体の質量の大小にかかわらず一定なのです。ただし、現実の観測では空気抵抗などに左右されるので、空気抵抗を無視できる真空管の中などでの話と考えてください。
例題2
ある物体を初速度 で真上に投げあげた。投げあげた地点を基点とすると、最高到達点は何mか。また、ふたたび手もとに戻ってくるまでの時間は何秒か。ただし、重力加速度を とし、空気抵抗の影響は考えないものとする。
例題2の解き方
今回は、初速度と重力加速度の向きが異なっています。
上向きを正とすると、速度と変位を表す式は以下のように書きかえられます。
・ …①
・ …②
最高到達点での速度は 0 となっていることから、①に与えられた値をあてはめて、
これで、最高到達点に至るまでの時間は 2 秒であることがわかります。これを②に代入すれば、最高到達点が求まります。
(m)
また、手もとに戻ったときの変位は 0 に戻っているので、②より
この方程式を解くと、
という解が得られます。
今回求めているのは、投げあげてから手もとに戻ってくるまでの時間なので、答えは 4 秒となります。
等加速度直線運動の例
等加速度直線運動には、例題1のような自由落下、例題2のような鉛直投射の他にも、摩擦のある面を物体が滑っていく運動があります。これも例題2のように運動の向きと加速度の向きが異なる等加速度直線運動です。まずは冒頭に上げた公式をしっかり覚えたうえで、運動と加速度の向きによって公式を自由に変形できるようにしておきましょう。
「斜面や摩擦のある面での等加速度直線運動」にて、例題を紹介していますので、こちらも参考にしてください。
補足
等加速度直線運動の公式をしっかり覚えるために、この公式の仕組みを説明しておきます。
この分野は数学の微分積分が得意な人にとってはお得な分野です。
距離の変化率が速度、速度の変化率が加速度ですから、距離を時間で微分したものが速度、速度を時間で微分したものが加速度となります。
その逆を考えれば、積分の知識のみで、速度の式、変位の式が求められるのです。
これで、もし等加速度直線運動の公式を忘れてしまっても、思い出す手がかりができたのではないでしょうか。
は、積分定数として書き足しましたが、これは初期位置を表します。
初期位置からの変位に注目する際には、 となるわけです。
補足としましたが、物理と数学のつながりがわかる面白い分野なので、ぜひマスターしてくださいね。