酸塩基反応 H+のキャッチボール
酸塩基反応って中学生の理科でいうところの酸性とアルカリ性(塩基性;高校ではこう呼びます)の反応じゃないの?というかそれだけしかないんじゃないの?って思ってしまっている方が多いです。
実際は酸性と塩基性の反応も立派な酸塩基反応なのですが実際はというと
水素イオン(H+)のやり取り
なのです。実際はこのやりとりのことを酸塩基反応といいます。
実際どういう酸と塩基の酸塩基反応の定義があるか見ていきましょう。
(今のところ酸は酸性、塩基はアルカリ性だと思っておいてください。詳しい定義は後ろでまた説明します)
アレーニウスの定義
スウェーデンの科学者アレーニウスは、酸と塩基を次のように定義しました。
酸; H+を放出するもの
塩基; OH–を放出するもの
実際に酸塩基反応を見てみましょう
HCl→H++Cl–
このときHClはH+を放出しているので酸となります。
実際このときH+は水溶液中のH2Oと反応してH3O+(オキソニウムイオン)として存在しています。
もうひとつ酸塩基反応
NaOH→Na++OH–
このように酸はH+を放出し、塩基はOH–を放出するものだと認識されました。
ブレンステッドの定義
アレーニウスの定義にはひとつ欠点があります。
それは
水溶液中でないと定義できない。
という点です。実際はもっといろいろな溶液あり、その中でももちろん酸塩基反応は行われますよね!?
そこでスウェーデンの隣国のデンマークのブレンステッドさんはどんな水溶液中のものでも酸塩基反応が定義できるようにしました。
酸; H+を放出するもの
塩基; H+を受け取るもの
違いは塩基がH+を受け取るものに変わっているところです。簡単に言うと酸はピッチャー、塩基はキャッチャー、H+はボールです。
より細かく酸塩基反応を見ていきましょう。例えば、よくある塩酸と水酸化ナトリウムの酸塩基反応です。
HCl+NaOH→NaCl+H2O
(酸)(塩基)
このとき塩酸にくっついているH+は放出されて水酸化ナトリウムにくっついているOHーと反応して水を生成しています。このとき塩酸はH+を放出しているので酸、水酸化ナトリウムは塩基になります。もうひとつ酸塩基反応を見てみましょう。今度はOHーがないパターンです
HCl + NH3 → NH4Cl
(酸) (塩基)
このとき塩酸のH+がアンモニアにくっつくので、塩酸が酸、アンモニアが塩基となります。また、アンモニアの場合OHが無いので、水はできないです。
酸塩基の価数
ピッチャーやキャッチャーにも能力の差があるように酸と塩基にも能力の差があります。ここでいう能力はH+を酸だったら何個出せるか塩基だったらH+を何個受け取ることができるか?です。このことを専門用語で言いますと酸(塩基)の価数といいます。
表にまとめましたので見ていきましょう
価数 | 酸 | 塩基 |
1価 | HCl、HNO3 | NaOH、KOH、NH4 |
2価 | H2SO4 | Ca(OH)2 |
3価 | H3PO4 | Fe(OH)3 |
ここで、共通点は何かといいますと、酸の場合はH+、塩基の場合はOH– が何個あるかがそのまま価数になっていますよね。この共通点さえ覚えておけば後は実際式を作って酸塩基反応なのかどうなのかを確かめるだけです。塩基であるアンモニアだけこの例外パターンとなりますので注意して下さい。
問題
次の中から酸塩基反応のものを選びなさい
(1)H2SO4 + Ba(OH)2 → BaSO4 + 2H2O
(2)CH3COONa + HCl → CH3COOH + NaCl
(3)2CuO+C→2Cu+CO2
(4)Mg+2H2O→Mg(OH)2+H2
(1)について
硫酸と水酸化バリウムが反応して硫酸バリウムと水ができる反応ですね。これはアレーニウスの定義に従うと硫酸(酸)はH+を出し水酸化バリウム(塩基)はOH–を出します。なのでこの反応は酸塩基反応です。
(2)
これはアレーニウスの定義だとOH–がないので定義できない酸塩基反応パターンです。しかし、ブレンステッドの定義を使うとこれが酸塩基反応だとわかります。H+を放出しているHClは酸となり、これを受け取る酢酸ナトリウムが塩基となります。
(3)
これは中学校で習った酸化還元反応です。これはどこにもHがないので酸塩基反応にはなりませんし、当然酸も塩基もありません。
(4)
ちょっと難しいかもしれないです。理由はマグネシウムと水が反応して水酸化マグネシウムができるのですが、水酸化マグネシウムができるという理由だけで酸塩基反応だと勘違いしてしまう方が結構います。この反応よく見てみると水のなかから2つのOHがマグネシウムに移っていることがわかります。H+のやり取りは全くないのでこれは酸塩基反応ではありません。
なので正解は(1)と(2)になります。
まとめると
酸塩基反応はH+のキャッチボールで酸はピッチャー、塩基はキャッチャーになるということです。