集団的自衛権と集団安全保障の違いをまとめてみた|政治経済勉強法
集団?集団的?どちらも安全保障に関わる言葉で、意味がごっちゃになってしまいがちです。ここでは、それぞれについて反対の意味の言葉とセットで覚えることにしましょう!
集団的自衛権と個別的自衛権
まずは集団的自衛権について、これの反対の言葉は個別的自衛権になります。いずれも、「いつやり返してよいか」についての考えです(※当然ですが、戦争は違法とされてます)。わかりやすいので、後者から説明していきます。
個別的自衛権は、「やられたらやり返してよい」という、自衛の言葉そのものの意味ですね。相手が国境を侵犯してきたら、こちらからもやり返す。単純ですね。まあ、「やられたらやり返す」からといって、倍返しにしてもいいのかは知りませんが……
集団的自衛権は、「自分ではなくて仲間がやられたときにもやり返してよい」ということです。ドラえもんを例に挙げると、別の学校のガキ大将にスネ夫が殴られたとしますね。そうすると、仲間であるジャイアンは代わりにそのガキ大将を殴りにいくことでしょうし、それが認められる。これが集団的自衛権です。ちなみに、出来杉が殴られたときには、ジャイアンは仲間ではないので殴り返しにはいかないでしょうし、殴り返したとしたら正当なことだと認められない、ということです。
集団安全保障と勢力均衡
次は集団安全保障についてです。これの反対の言葉は勢力均衡になります。どちらも、「どうすれば戦争を防げるか」を目的としています。これも後者から説明していきます。
勢力均衡とは、対立するグループがだいたい同じくらいの強さでいずれも戦争で勝つか負けるかわからないから、戦争を控えるようになる、というものです。自分が絶対に戦争に勝つことが明らかならば、戦争するかどうかの決断は簡単ですが、負けるかもしれないならばそうはいきません。これを利用したのが、ドイツのビスマルクです。ヨーロッパの各国が複雑な同盟関係を作るのを促すことで、常に強さのバランスを維持して、どこかの国が強くなりすぎないようにしました。
集団安全保障は、全員が同じグループに入り、違反する者を全員が協力して処罰する、というシステムです。どんなに強い国でも、そのほかすべての合計ほどは強くないから、戦争になれば負けてしまうために戦争を断念させる、というものです。具体例としては第二次世界大戦以後の国際連合ですね。1990年にイラクのフセイン政権が隣国クウェートに侵攻した際には、その他の加盟国ほぼすべてが一致して協力してイラクを制裁しました。
まとめ
では、結局、集団的自衛権と集団安全保障はどう違っていたのでしょうか。集団的自衛権は「いつやり返してよいか」という権利に関する言葉である。集団安全保障は「どうすれば戦争を防げるか」というシステムに関する言葉である。ということでした。
例題
次のうち、集団安全保障に関するものはどれか、選びなさい。
1.日米安全保障条約
2.湾岸戦争
3.NATO
4.イスラーム国
解答解説
1.日米安全保障条約:アメリカと日本の二国間条約で、仮想敵があるいわゆる同盟なので、×
2.湾岸戦争:イラクによるクウェート侵攻に対して国連加盟国で協力して制裁した。これが集団安全保障。だから、○。
3.NATO:冷戦中のアメリカを中心とした西側諸国による同盟で、ソビエト連邦を仮想敵としていた。よって×。
4.イスラーム国:中東の非国家主体、というか自称国家の武装集団。有志国によって空爆など制裁がされているが、国連加盟国全体で一致して協力しているわけではない(2015年現在)。よって×。